どろみずらんど

これが泥水のはじまり

感想 シン・仮面ライダー

この感想は多少のネタバレを含みます

情報ゼロで見たい方はお気をつけ下さい

 

野秀明の特撮「シン」シリーズ3作目

『シン・仮面ライダー』を観た

 

人によって意見の分かれる作品だという事はわかるが、自分的には めちゃめちゃ良かった… という感想

公開から一週間経ったので、つらつらと感想を書いていきたい

 

自分自身は、今作映画のリブート元となった特撮ドラマ『仮面ライダー』を幼少期に良く見ていたため、リブートと発表がされた時から期待をしていたし、絶対に観に行こうと思っていた

というのも、父親がオリジナルの世代であり自分も幼少期に影響を受けて観ていたという事が大きい(でなければ観ていない世代

 

この映画を観るまでは事前知識は入れずにいたが、見終わってから観てみると賛否両論の意見が飛び交っていた

確かに庵野秀明のクセも凄く色濃く、仮面ライダーというブランドのみでこの映画を観ると呆然としてしまうかもしれない

 

仮面ライダー』初期は原案の『スカルマン』を進化させたバッタのヒーローモノとしてうまれ、当時は予算も少なく『ウルトラマン』のような大掛かりな事もできなかった

その中でも石森章太郎(当時)の案により、常にシリアスさや人間ドラマがある作品として進んでいった

その後、視聴率の低迷や藤岡弘の事故もあり、作品の中で次第に変身ポーズなどを登場させて子供向けへとシフトチェンジして以降、人気が出てV3,X,アマゾンやストロンガーとシリーズ化していったという背景がある

 

庵野秀明の好む所は、『仮面ライダー』初期のシリアスさのあるモノだろうとは思っていた

それもその通りだったようで、内容としては旧1号、旧2号の路線をミックスしてリブートしたような作品となっている

そのため、最近の平成・令和ライダーのような作品と比べてしまうと、独自要素も相まって「よくわからない」、戦闘シーンも昔ながらにパンチ・キックが多く「安っぽい」「殴り合いしかでてこない」といった感想しか出てこないのも仕方がないだろう

 

そして、庵野のオタクな所が全面に出てしまっているために漫画版『仮面ライダー』(著・石ノ森章太郎)が物語の中で大きく再現されている所も多く、ましてや石ノ森章太郎の他作品までモチーフとして登場する

そのため特撮ドラマしか知らない人からも、「このシーンなに?」「この展開は?」などと一定の層からも言われてしまう事になっていると思われる

自分は漫画版も既読のため、2号の登場の仕方やラストの展開について疑問に思う事もなかった

むしろ、 この展開は漫画版の…!?と歓喜した程である

 

 

シンにあたり、原作本編とは設定が異なっている所がたくさんある

その中でも大まかな所だけ説明したいとおもう

 

ショッカー

かつて原作ではナチスの残党が世界征服を目論む組織、それがショッカーであった

 

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これがかつて第三帝国時代か引き継がれた、ナチス党の鷲紋

 

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そしてこれが、初代ショッカーのマーク

鷲の胸が緑色に光り、首領が喋る

 

シンではSHOCKERとなり、持続可能な幸福を目指す組織として新しくリファインされている

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マークこそ鷲だが、時代を考えてナチスとの縁は断ち切られているようだ

 

原作のカメレオン男の話では、日本に隠されたナチスの財宝を狙う話がある

当時はナチスなどが、現在のロシアのように敵としてよく使われていたのだろう

 

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緑川ルリ子

原作では、緑川博士の娘として本郷猛の仲間

最初は緑川博士を殺したのが本郷だと思い疑いの目を向けるが、その後は協力関係として度々登場した

 

シンでは明らかなるヒロインに昇格

原作では博士の娘程度の存在だったが、オリジナル設定がてんこ盛りに詰め込まれ超重要キャラクター

浜辺美波が画面映えポイントだからか、庵野の好きそうなカットもやたら多い

本郷猛との関係も原作とは違い、固い絆のようなものもある

仮面ライダー THE FIRST』のようなオリジナルヒロイン出されるよりはだいぶ良いと思う

 

怪人

シンに登場する怪人は尺の関係もあり、原作における序盤の数人となっている

クモ男、コウモリ男、蜂女

この辺りの原作を観ておくと、能力やオマージュに「おっ?」と思うかもしれない

 

サソリ男、カマキリ男、カメレオン男、この辺りも出てくるが、原作は見なくても可

ましてやサソリは女になって、カマキリとカメレオンは融合されている…

 

この融合は、原作における後半ゲルショッカーの怪人に似ている

ゲルショッカーはドラマ後期において、強化怪人として複合怪人が多く登場した

例 )カニ + コウモリ = ガニコウモル

 

2号

仮面ライダー2号といえば、赤いベルトに肩に一本線、一文字隼人が変身するライダーである

 

原作では当時、低予算もありスタントマン等を使う事ができず本郷猛役 藤岡弘が生身で撮影に挑んだシーンも多々あったという

そんな中で10話の撮影中、東京都町田市の鶴川街道で事故にあい、撮影中断を余儀なくされて療養中の穴を埋めるため2号ライダーへと切り替わった

設定ではアメリカへ渡米し日本を一文字隼人に任せるような形であった

 

シンでは漫画版の設定が色濃く出ていて、敵として登場する場面からはじまる

漫画版ではショッカーの怪人として脳改造されており、1号との戦いの中で記憶を取り戻すという話であるが、シンにおいても受け継がれている設定でもある

また作中には本郷猛が脚を怪我するというマニア向けな小ネタが登場する

 

ショッカーライダー

ショッカーライダーとは、にせ仮面ライダーである

いわゆる、にせウルトラマン や にせオーキドはかせ のようなもの

 

ドラマでは仮面ライダーのふりをして子供に意地悪をしたり、仮面ライダーの評判を下げるような悪事を行い、最後には戦ってダブルライダーにやられる6人の黄色の手袋、カラフルなマフラーをした集団

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しかし漫画版では、卑怯もなんのその光線銃にて本郷猛を蜂の巣にするというあくどい12人のライダーたち

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シンでは漫画版の面が強く、仮面ライダーの量産型として10人?登場する

そして、映画にて観客を置いてきぼりにするシーンのひとつだろう

このシーンは漫画のバイク+銃のめった撃ちオマージュを理解していないと

「何が起きてる?」「なんでバイク?」

「え?なになになに?」となりがちである

特に画面が暗い中、アクションが激しいためCGも多く、その中で銃のマズルフラッシュが眩しい

 

庵野の意図としては、昔の仮面ライダーは暗く不気味というイメージ

それを具現化して、暗がりに光るライダー達の赤い目に漫画シーンの再現、両方を取りたかったのだろうと思われる

しかし、流石にこれは初見殺し

自分も最初は、なんでこんな暗くて見づらいんだ…?と思った程である

 

感想

ここまで良い事を多く書いてきたが、気になった点も多少ある

尺の関係上もあるが、緑川ルリ子の過去の情報量が薄く、かつての仲間との話がピンと来ない

原作にない設定のため、あれもこれもと詰め込んだシンシリーズに描写不足は仕方ない事かもしれない

 

庵野秀明の趣味趣向の溢れたサソリ女のシーン

自分は嫌いじゃないけど、本当に映画館が凍りついたのを感じた謎の時間

そして、短すぎる長澤まさみの出番

 

決して悪いということではないが、本郷猛のキャラクター性が頭脳明晰スポーツ万能、しかし過去のこともあり陰キャという個性が加えられていて、藤岡弘の本郷猛とはギャップがあり受け入れるまでに時間がかかってしまった

池松壮亮の演技が悪いとかではなく設定上の違和感であり、今思えば原作と全く同じでは面白くないので変わってよかったポイント

 

対し2号の一文字隼人は柄本佑がとても気さくでいい演技をするので、佐々木剛の一文字とは似ているようで違う個性が出ていて良かった

こちらはキャラクターのイメージはほぼ変わらず、原作通りかというべきか

 

映画始まってすぐから殴って血が飛び出るようなゴア表現、これも漫画版の再現だろうが…結果的にPG12となっているので、層が限られるな…?

たしかに当時の仮面ライダー初期は幼児や小学生というよりは中高生向けに作られていた所もあり、変身ブーム等の子供向けにシフトチェンジする前を本当に再現したいんだなと感じた

 

終盤オリジナルライダーが出てくるが、モチーフはとても良くビジュアルもいいのだが、、、

あの能のような謎の動きがシリアスを強く押し出したシン仮面ライダーには合っていないような気もした…

 

また最新予告にも登場していたが、前作シンウルトラマンにも出ていた斎藤工竹野内豊

彼らが重要な役割でありオマージュも含まれたキャラクターであることが最後にわかって良かった

 

特にラストは漫画版の仮面ライダーに近い終わり方である所が一番感動したし、新サイクロン号のシン版も出してくれた所も凄く良かった

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シンウルトラマンでは主題歌に米津玄師を起用するなど、新規の人の呼び込みをしてるように見受けられたが、シン仮面ライダーでは浜辺美波くらいしか新規を呼び込むような番宣も行ってないので、庵野秀明も万人受けを狙って作ってはいないのかもしれない

 

また、エンディングで原作で流れた子門真人の挿入歌が流れたり、原作曲を戦闘シーンに使ったり、当時のファンが喜ぶ要素はてんこ盛りすぎた

個人的には『ロンリー仮面ライダー』歌・子門真人はイントロが特徴で、小学生以来約20年ぶりに聞いたのもあり懐かしい…と感じた

あれ以来歌ってもなかったのに口ずさむ事ができる自分に驚いたし、今思うと歌詞も含めて良い曲なんだなと再認識した

 

ちなみに、予告によく出てくる

「御期待ください」は原作の次回予告のオマージュ

この時点でわからない人が出てきそうだなとも思ったし、当たり前の知識として説明してる人も少ないので皆にスルーされているポイントでもある

 

 

さいごに

『シン仮面ライダー』は仮面ライダーファンでも評価は分かれる作品だと思うが、イメージとしては昨年Amazon限定で配信された西島秀俊中村倫也の『仮面ライダーBLACKSUN』のような作品が近いと思う

 

あくまでファンに向けたコア作品ではあるが、仮面ライダーのカッコよさに趣は置かれているため、初代を知らなくても仮面ライダーの他作品を見たり、ライダーが変身する、バイクが毎回登場する等の基礎知識があれば60%くらいは楽しめると思う

ただ、シンゴジラやシンウルトラマンのように単純明快ではないので、多少なりとも仮面ライダーに興味がないと解説が理解できず置いてけぼりを食らうのはありそうだ

ライダーに興味を持っているのであれば1つの作品として是非、一度観てほしいと思う